特集 あしがらの酒蔵
日本の名水として名高い丹沢山系の伏流水。
神奈川県内で13軒ある酒蔵のうち、5軒があしがらエリアに位置しています。
この清らかに流れる伏流水を「仕込み水」に、各酒蔵では
古くから培われてきた伝統技術に、新たな趣向を加えて
豊かな味わいを醸しています。
大井町・石井醸造
歴史ある地で行雲流水綿々とはぐくむ「四段仕込み」の濃醇な味わい
明治3年(1870年)創業の「石井醸造」は、かつて曽我村と呼ばれた曽我兄弟ゆかりの地、神奈川県を代表する梅の産地・曽我梅林の近くに位置し、梅の咲く時期には新酒の出来上がりと重なり観光客でにぎわいます。歴史を感じる門をくぐると、水色の外壁が映える洋館が目に入り、ここだけ時間が止まっているようです。
石井醸造のお酒
「石井醸造」の特徴は、濃醇(のうじゅん)な味わいを醸し出すため、もろみを通常の3回に分けて仕込む「三段仕込み」ではなく、4回に分ける「四段仕込み」を伝承。さらに4回目の仕込みを通常の掛け米では用いない“もち米”を使うことで、コクのある酒質を造り出しています。
住所:神奈川県足柄上郡大井町上大井954
TEL:0465-82-3241
大井町・井上酒造
時代の追い風を見極め柔軟に舵を切る、県内屈指の老舗酒蔵店
寛政元年(1789年)の創業以来、7代・230年以上にわたって、清涼な冷気と伏流水に厳選された原料米を使用する神奈川県内では屈指の老舗酒蔵店。
もともと農業を営んでいた創業時の当主が、新しい商売をもとめて城下町・小田原に出向く途中に石につまずき、その石の形が徳利に似ていたことから酒造業を始めたというエピソードが語り継がれているそうです。
井上酒造のお酒
これまでの代表銘柄は「国基(こくき)」や「東祝(あずまいわい)」にはじまり、現在は「箱根山」「箱根薔薇」と時代の変遷と共に銘柄も変化してきました。最近では日本酒初心者さんにもオススメの商品も展開し、日本酒リキュール「湘南ゴールド」や発泡純米酒「スウィート・ハート」のお酒なども人気です。
住所:神奈川県足柄上郡大井町上大井552
TEL:0465-82-0325
山北町・川西屋酒造店
料理の美味しさを引き出し“すっとキレる”日本酒造りを追求
山北町にある「川西屋酒造店」は、かつて大雄山最乗寺の御用商人として米穀商を営んでいた先代の分家として、明治30年(1897年)に“酒匂川の西側”の地で醸造業を営んだことから名付けられました。
酒が料理の美味しさを引き出すと同時に料理が酒の味わいを高め、深い味わいと余韻を残しながら“すっとキレる”日本酒造りを目指し、現在は全量純米蔵で展開しています。
川西屋酒造店のお酒
全量純米蔵にこだわる「川西屋酒造店」の代表銘柄は、タンク熟成によって生まれるうま味や枯れた味わいをお燗で楽しむ「丹沢山・丹澤山」と、酒米ごとの個性を堪能する純米吟醸の「隆(りゅう)」シリーズ。“食物との一体感”を信条に、食べ物のうま味を引き立てます。
住所:神奈川県足柄上郡山北町山北250
TEL:0465-75-0009
開成町・瀬戸酒造店
田園風景の中に佇む老舗蔵元が、新たな感性で醸し、再び花開く
四季折々の表情を見せる水田や丹沢の山々を望む、のどかな場所に佇む「瀬戸酒造店」。慶応元年(1865年)に創業し、1980年に自家醸造を中断していましたが、38年ぶりとなる2018年から再び醸造をスタートしました。
酒造復活の立役者となったのは、開成町から地域創生の依頼を受けたコンサルタント会社の森隆信さん。箱根に近く、田園風景美しく新たな観光拠点ともなる酒造の可能性を見いだし、滑らかな軟水の特徴を活かした全量小仕込みの丁寧な製法の日本酒とともに地域力を高めています。
瀬戸酒造店のお酒
幕末から続く代表銘柄を継承した「酒田錦」や「あしがり郷」ほか、“はるばる”“かくかくしかじか ”といった個性的なネーミングで飲むときのシーンに合わせた味わいの「セトイチ」シリーズがあります。その時々で飲み比べができるよう、ほとんどの銘柄で300mlを用意。敷地内には買ったお酒を縁側に座って飲める日本庭園角うちコーナーがあるのもうれしいポイント。
住所:神奈川県足柄上郡開成町金井島17
TEL:0465-82-0055
松田町・中沢酒造
全量手造りの伝統とともに、酵母からこだわる新たな酒造りに尽力
“こびず、おごらず”素直な酒造りに取り組む「中沢酒造」は、文政8年(1825年)創業。
代表銘柄「松美酉(まつみどり)」の名称は、小田原藩の御用商人として城主の大久保家から授けられたそうです。その意味は、松田周辺の景勝からで、「松」は蔵の横を流れる酒匂川沿いの松並木、「美」は松田町の美しい風景とこの美酒を。そして「酉」は酒壷の形を表しています。
中沢酒造のお酒
代表銘柄の「松美酉(まつみどり)」をはじめ、全量手造りにこだわる「中沢酒造」。近年は、酵母からこだわる新たな日本酒造りに取り組み、地元・松田山で咲く河津桜の酵母を使用した春季限定「河津桜酵母仕込み 特別純米 亮ver.若水」や、“幻の酵母”を使った純米吟醸「 S.tokyo」が注目されています。
住所:神奈川県足柄上郡松田町松田惣領1875
TEL:0465-82-0024
※掲載情報は2020 年11 月現在
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